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塗装M&Aは、塗装会社の株式や事業を第三者へ譲り、職人、顧客、施工体制、保証対応を次の経営者につなぐ方法です。会社売却を検討するときは、価格とともに「進行中の工事を誰が完成させるか」「従業員・元請・お客様との関係をどう引き継ぐか」を具体的にします。
このページでは、外壁塗装、建築塗装、防水、リフォーム、橋梁・プラント塗装の経営者に向けて、価格の考え方、譲渡方法、準備資料、交渉の判断点を整理しています。まだ売却を決めていない段階から使える確認項目です。
塗装会社の売却相場は、どのように考えますか?
塗装会社の売却価格は、売上高や利益に一定の倍率を掛けるだけでは決まりません。財務状態、工事ごとの採算、受注の継続性、必要な人材、保証対応に加え、買い手の引継ぎ体制や譲渡条件によって変わります。公開案件の希望価格も、そのまま成約価格の相場としては使えません。
中小企業庁のガイドラインは、複数の評価方法を紹介し、算定額と実際の譲渡額は必ずしも一致せず、最終的には当事者間の合意によると説明しています。次の式は、資料を整理する際に使う考え方の一例です。塗装業に共通する倍率や成約価格を示すものではありません。[1]
時価純資産 = 資産の時価評価額 − 負債の時価評価額
株式価値の参考額の一例 = 時価純資産 + 営業権として考慮する価値
資産・負債の評価には、未収代金の回収見込み、未成工事の残原価、未払費用、補修負担等を反映する必要があるか確認します。営業権は、引継ぎ後の収益や顧客・施工体制を踏まえて検討する部分です。利益の何年分を加えるかを一律には決められません。
比較に使う数字は、工事の実態に合わせてそろえる
直近3期の決算と月次推移を出発点に、一時的な収入・支出、社長が担う業務を代替するための人件費、未計上の外注・補修費等を説明します。数値を調整する場合は根拠を残し、実績・見込み・交渉上の仮定を分けます。
戸建て外壁塗装なら反響・紹介・OB顧客からの受注、建築塗装なら元請別の取引条件と施工管理、防水なら施工仕様と保証、橋梁・プラント塗装なら工事実績・安全管理・配置人員の説明が判断材料になります。詳しくは外壁塗装会社のM&A、建築塗装会社のM&A、防水工事会社のM&Aをご覧ください。
譲渡価格と経営者個人の手取りは別に確認します。誰が対価を受け取るのか、税金、外部専門家費用、借入の返済、代金の分割・後払い条件を含めて比較します。法人の事業譲渡では対価を受け取るのは原則として会社であり、その額がそのまま経営者個人の手取りになるわけではありません。
株式譲渡と事業譲渡で、引き継ぐ対象が変わる
希望価格だけで先に方法を決めず、残したい事業、株主構成、工事契約、借入、許可、人材から適した方法を検討します。個人事業には会社の株式がないため、法人の株式譲渡と同じ扱いにはなりません。
表は横にスクロールできます。キーボードでは表にフォーカスして左右キーで移動できます。
| 確認項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 譲る対象・対価の受取人 | 株主が保有株式を譲渡し、株主が対価を受け取ります。会社自体は存続します。 | 会社・事業主が対象事業や資産等を譲渡し、譲渡主体が対価を受け取ります。対象範囲を明確にします。 |
| 工事契約・債務 | 契約当事者である会社は同じですが、株主・代表者変更に関する通知や承諾の条項、借入条件等を確認します。 | 引き継ぐ契約・資産・債務を個別に整理し、相手方の承諾等が必要か確認します。 |
| 建設業許可 | 会社の許可を前提に、役員や営業所技術者等の変更で要件を失わないか、届出が必要か確認します。 | 事前認可による承継制度がありますが、対象・許可要件等の確認が必要です。許可行政庁と承継日までの手続を確認します。 |
| 従業員・協力会社 | 雇用主は同じ会社です。処遇・配置変更、重要人材の継続、協力会社との条件を確認します。 | 労働契約の承継には従業員の個別承諾が必要です。業務・勤務地等を説明し協議します。協力会社の契約は別に確認します。 |
| 過去の工事・保証 | 会社に残る補修・契約上の責任等も確認対象です。保証書やクレーム履歴を調べます。 | 保証責任の範囲、顧客への説明、保証・保険の取扱いを契約ごとに確認します。 |
建設業許可の承継と契約・雇用の承継は別々に確認します。許可の一部業種だけを当然に移せる制度ではありません。必要な手続は、許可業種、譲渡方法、許可行政庁、個別契約により異なります。[2] [3] [4]
未成工事・前受金・未収金・施工保証を一つの表で確認する
工事台帳は、案件名を並べるだけでなく、引継ぎ後の完成と資金繰りを判断できる状態にします。受注残が多くても、残りの材料費・足場費・外注費や支払時期によって必要な資金は変わります。会計上の残高と工事の進捗を、同じ基準日で照合することが出発点です。
| 項目 | そろえる情報 | 条件交渉までに決めること |
|---|---|---|
| 受注・契約 | 元請・発注者、注文書・請書、契約金額、追加変更の合意、着工・完工予定 | 継続条件、承諾・通知の要否、追加工事の代金と説明担当 |
| 未成工事・残原価 | 進捗、既発生原価、完成までの材料・労務・足場・外注費、手直しの見込み | 誰が完成まで施工管理するか、赤字・遅延等の見込みを条件にどう反映するか |
| 前受金・入金予定 | 着手金・中間金、入金済額、次の請求条件、残工事との対応 | 承継後の施工資金が確保できるか、資金と工事義務の引継ぎ範囲 |
| 未収金・未払金 | 請求済・未請求、入金遅延、検収未了、材料・外注の未払、相殺条件 | 回収可能性、支払いの担当・時期、譲渡日をまたぐ精算方法 |
| 保証・補修 | 施工会社・メーカーの保証書、保険付保証明書、対象・免責・残存期間、点検・クレーム履歴 | 補修費用の負担、顧客への説明、保証窓口と記録の引継ぎ |
| 施工記録・安全管理 | 仕様書、使用材料、工程写真、検査記録、必要な調査・安全書類 | 現場ごとの未対応事項、協力業者への伝達、完工後に照会できる保管先 |
未成工事支出金、未成工事受入金、完成工事未収入金は性質の違う項目です。残高だけを相殺して判断せず、対象工事と計上内容を会計担当者へ確認します。元請・下請との契約も実際の条項を読み、必要な承諾や通知を整理します。[5] [6]
施工会社の保証、メーカー保証、リフォーム瑕疵保険は同じものではありません。保証・保険の対象や承継後の取扱いは契約ごとに確認し、一律の保証年数や自動承継を前提にしません。[7]
売却後に経営者保証が残らないかを確認する
借入に対する経営者個人の保証は、株式を売却しただけでは解除されません。買い手が「引き受ける」と約束することと、金融機関等が解除・変更に同意することは別です。中小企業庁も、M&A後に個人保証が解除されないトラブルを示しています。[8]
- 対象を洗い出す:金融機関・保証協会等、借入残高、保証人、担保、関連する契約を一覧にする。
- 成立前に相談する:保証先への相談時期と説明内容を支援者と整理し、解除・変更に必要な審査、資料、返済・借換え等の条件を確認する。
- 契約と実行条件を合わせる:解除確認を譲渡実行の条件にするか、確認資料、期限、未了の場合の対応を弁護士等と検討する。
- 手続の完了を確かめる:買い手の約束だけで完了扱いにせず、保証先の同意と必要な手続の履行を確認する。
保証解除の可否は金融機関等の判断を伴います。希望する引退時期とあわせ、最終契約の直前まで確認を後回しにしないことが大切です。
初期相談からDD・引継ぎまでの6段階
候補先に関心を持ってもらう段階と、契約を結べる状態を確かめる段階を分けます。DD(デューデリジェンス)は買収前の調査、PMIはM&A後に経営・業務をつなぐ取組です。必要な調査や日程は、案件の規模と課題によって変わります。
- 目的と守りたい条件を整理する
売却理由、希望時期、雇用・屋号・商圏、社長が残る期間を整理します。
判断点:売却、親族・従業員への承継、継続経営のどれを検討するか。 - 資料をそろえ、譲渡の範囲と評価の前提を決める
決算、工事台帳、人員、契約、許可、借入・保証を確認し、株式・事業のどちらを対象にするか検討します。
判断点:価格を検討する材料が足りているか、先に解消する課題は何か。 - 候補先と情報開示の範囲を決める
会社を特定しにくい概要から検討を進め、秘密保持契約と譲渡企業の意向を踏まえて詳細開示・面談へ進みます。
判断点:買い手の目的、資金計画、施工体制、引継ぎ方針が合うか。 - 基本合意とDDで前提を確かめる
価格・方式・日程等の方向性を整理し、財務・税務・法務・工事・人材を調査します。基本合意の拘束力、独占交渉、費用等も確認します。
判断点:残原価、未収、保証、許可・人員等の調査結果を価格や条件へどう反映するか。 - 最終契約と譲渡実行の条件を確認する
代金の支払い、保証解除、必要な承諾・認可、従業員対応、補修等の責任範囲を確認して契約・実行へ進みます。
判断点:署名する条件と、実際に譲渡を実行するための条件が満たされるか。 - PMIで現場と顧客対応を引き継ぐ
初日の受注・請求・入出金・緊急連絡、現場責任者、保証窓口を決めます。以後は担当と期限を決め、施工品質、採算、人員、顧客説明の進捗を確認します。
判断点:社長の経験に頼っていた仕事を、引継ぎ先が継続できるか。[9]
候補ごとの資金・施工体制・条件を比べるときは、塗装会社M&Aで買い手候補を比較する方法をご覧ください。現場の担当と権限の引継ぎは、番頭・職長がいる塗装会社の事業承継ポイントで具体化しています。
初期相談までに整理しておきたい資料
最初からすべての資料を提出する必要はありません。まず、手元にある資料と不足している資料を分けます。顧客名・個人情報・現場の詳細は、開示先と目的に応じて範囲を管理します。
- 会社と財務:直近3期の決算書、直近の月次試算表、株主・持分、借入・保証・担保の一覧。
- 受注と現場:元請別・工種別の売上と粗利、受注残、進行中工事、追加変更、工事台帳、前受・未収・未払。
- 人材と許可:現調・見積・営業・施工管理の担当、職長・技能者・資格者、雇用条件、協力会社、建設業許可と変更履歴。
- 顧客と保証:OB顧客・管理会社・元請・紹介ルート、施工保証、保険、点検・手直し・クレームの履歴。
- 仕入れと施工体制:材料仕入先、足場・外注の契約と単価、設備・車両・リース、社長が直接手配している業務。
- 譲渡の希望条件:希望時期、守りたい雇用・待遇・屋号・地域ブランド、社長の引継ぎ期間、譲渡対象から外したいもの。
譲渡企業の手数料と、別に確認する費用
塗装業界M&A総合センターでは、譲渡企業様の相談料・着手金・中間金・月額報酬・成約時の成功報酬は0円です。税金、登記・許認可手続、外部の弁護士・税理士等への依頼、個別調査や資料取得等の実費は別途生じる場合があります。依頼内容、依頼先、負担者を事前に確認します。買い手の費用・条件は別途ご案内します。
情報開示は段階的に進めます。詳しくは中小M&Aガイドラインの遵守について、支援内容の全体は塗装業界M&A総合センターのホームをご確認ください。
よくある質問
まだ売却を決めていなくても相談できますか?
はい。初期相談で、検討する理由、現在の受注・人員、希望時期、守りたい条件を整理できます。売却するかどうかの判断材料をそろえる段階からご相談ください。
小規模な塗装会社でもM&Aの対象になりますか?
対象になり得ます。売上規模だけでなく、引継ぎ後の受注、職人・元請・OB顧客・協力会社、施工と保証対応の継続性から検討します。希望条件と候補先の意向によって、成立の可能性は異なります。
工事が進行中でも会社売却の相談はできますか?
相談できます。案件ごとの進捗、残原価、入出金、保証を一覧にし、誰がどの条件で完成させるかを整理します。契約の承継や必要な承諾の確認があるため、譲渡希望日から逆算して準備します。
従業員や元請には、いつ説明しますか?
開示範囲を決めたうえで、承諾・認可等に必要な日程と、現場・雇用への影響を踏まえて説明時期を設計します。事業譲渡での労働契約承継には個別承諾が必要で、秘密保持を理由に必要な説明・協議を省くことはできません。
希望時期、主な工種、従業員・協力会社の体制、現在気になっている課題からお聞かせください。手元の資料に合わせて、次に確認することを整理します。
参照した公的・専門機関の資料
確認日:2026年9月9日。制度や手続は変更されることがあります。個別案件の適用は、契約内容を確認し、許可行政庁や金融機関、必要に応じて弁護士・税理士等と確認します。
- 中小企業庁:中小M&Aガイドライン(企業価値評価、譲渡額の算定)。
- 中小企業庁:M&Aの現状と実態(株式譲渡・事業譲渡の基本的な違い)。許可・雇用の現行手続は以下の資料も参照。
- 国土交通省 関東地方整備局:事業承継等の事前認可制度(PDF)。
- 厚生労働省:事業譲渡等指針の改正(2026年5月25日適用)。
- 千葉県:建設業許可手引・付表(PDF)(勘定科目の分類)。
- 国土交通省:建設工事標準請負契約約款(2025年12月改正の標準下請契約約款等)。
- 住宅瑕疵担保責任保険協会:リフォームのかし保険。
- 中小企業庁:M&Aに関するトラブルの注意喚起、経営者保証。
- 中小企業庁:PMIを実施する(中小PMIガイドライン・実践ツール)。